カスピ海周辺国の天然ガスを、トルコからブルガリア、ハンガリーを経てオーストリアまで、総延長3300kmで運ぶパイプライン計画。EU(欧州連合)が主導し、アメリカが後押ししており、エネルギーを外交手段の一つとしがちなロシアの領土を通らないことで、天然ガスの安定供給とヨーロッパの安全保障を高めることが狙い。2009年7月13日、パイプラインの通過手数料などに関する交渉がまとまり、トルコ、ブルガリア、ルーマニア、ハンガリー、オーストリアの5カ国が、パイプラインの国内通過に関する合意文書に調印した。11年に着工、14年の稼働を目指しており、建設費は約79億ユーロ(約1兆300億円)と見込まれる。巨額な建設費の調達ができるか、また、年間310億m3の輸送能力に対して、天然ガス供給を確保できるかどうか、が課題。ナブッコに対抗して、黒海から東ヨーロッパを通ってオーストリア、イタリアにつながる天然ガスパイプライン「サウス・ストリーム」を計画しているロシアも、資金面で問題を抱えている。