病院内など医療施設において、医療スタッフが受ける暴力。医師による看護師に対する暴力も含むが、とりわけ患者(もしくはその家族)による医師や看護師など医療スタッフに対する暴力のことをいい、こうした患者を和製英語でモンスター・ペイシェントという。全日本病院協会が行った「院内暴力など院内リスク管理体制に関する医療機関実態調査」(2008年4月21日発表)によれば、1年間で52%以上の病院が院内暴力(身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメント)を経験しており、警察への届け出はわずか5.8%、弁護士への相談も2.1%に過ぎず、その多くは処理の対応を内部で行っている。件数において、暴言やセクシュアルハラスメントなど精神的な暴力が身体的な暴力を上回る。暴力の当事者のほとんどが患者本人で、医療スタッフの60%がこれに不安を感じている。院内暴力が発生すると医療者側と患者の信頼関係の維持が困難となり、治療の障害となる。防止策としては、防犯ビデオ・カメラなどの設置、制止のための器具の設置、警備スタッフの巡回などをあげ、リスクマネジメント体制については84%の施設がセーフティーマネージャー(医療安全管理者)を設けている。院内暴力の要因としては、疾病による身体的・精神的な不安、医療に対する過剰な期待、治療がかなえられないときの失望感があるとされ、多くが患者と医療者側との相互理解を欠くことから生じ、患者からは医療者にかいま見える不誠実な態度などとがからみあい、患者の不満のはけ口が、身近に接する医療スタッフに向けられやすいため、とする意見がある。