ペプチドを薬剤に使ったがんの治療法。人の体が持つ免疫機能を利用する。免疫は、ウイルスや細菌などを非自己と認識し、体から排除するシステム。免疫細胞の主体となるのがリンパ球で、リンパ球の中でも、がんを攻撃する役割を持つものをキラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球 CTL)と呼ぶ。キラーT細胞は、がん細胞の表面にある8~10個のアミノ酸からできるたんぱく質の断片(ペプチド)を見つけ、非自己と認識したがん細胞を攻撃する。このしくみを利用する治療法をがんペプチドワクチン療法という。ペプチドは人工的に合成することが可能なので、合成したペプチドをワクチンとして体内に投与すると、キラーT細胞が活性化して増殖する。これにより、がん細胞を死滅に追いやったり、増殖を抑えることができる。このペプチドは、エピトープペプチド、がん抗原とも呼ばれ、数百種類以上発見されている。がんの種類によって、ペプチドの種類も異なる。2010年5月、厚生労働省の先進医療専門家会議は、福岡県の久留米大学先端癌治療研究センターが開発した、前立腺がんのがんペプチドワクチン療法を高度医療として承認することを決定した。これによって、全額負担だった治療費が一部、健康保険の適用を受けられるようになる。ただし対象は、ホルモン療法の効果がなく、内臓機能低下などから抗がん剤が利用できないなどの進行性前立腺がんの患者に限られる。がんペプチドワクチン療法は、ペプチド自体が体に害がないこと、副作用が少ないことなどから、外科・抗がん剤・放射線に次ぐ第4の治療法として注目されている。