生体の脂肪組織を形成する脂肪細胞の一つ。褐色脂肪細胞によって作られた組織を、褐色脂肪組織(brown adipose tissue ; BAT)という。細胞内に多数のミトコンドリアが存在し、組織の血流量も豊富なため、褐色をしているのが特徴。心臓や腎臓の周辺、首周り、脇の下、肩甲骨の間など、ごく限られた部位にある。これに対して、全身の皮下脂肪や内臓脂肪は、白色脂肪組織と呼ばれる。脂肪細胞の主な役割は細胞内に脂肪をため、必要に応じて筋肉に送りエネルギーに変えることだが、褐色脂肪細胞はため込んだ脂肪を燃やし、熱を産生して体温を保つ機能を担う。活性化させれば運動量にかかわらず脂肪代謝が進むことから、メタボリックシンドロームや肥満症治療への応用研究が盛ん。ただし褐色脂肪細胞は量が少なく、人間の場合は新生児期こそ100グラム程度あるものの、成育過程で減少し、成人では40グラム(体重の1%以下)程度しかない。特に男性では加齢による減少や活性の低下が、いわゆる中年太りの一因とも考えられている。2012年1月、アメリカのハーバード大学などの研究チームが、iPS細胞から褐色脂肪細胞を作ることに成功した、という報告を行った。