肺の表面を覆う肺胸膜と、胸郭の内側にある側壁胸膜とのすき間に過剰な量の液体がたまった状態、またはその液体のこと。このすき間を胸膜腔といい、通常時でもごく少量の液体(漿液)で満たされ、肺の動きを潤滑にしている。ところが心不全、肝硬変、肺炎、がんなどの病気にかかったり、肺などに炎症が起こると、液量が異常に増えて呼吸困難や胸痛、せき、頻脈、発熱などの症状を招く。たまる液体は原因によって、毛細血管などから出る黄色透明で水っぽい漏出液、病巣から出るたんぱく質の濃度が高い滲出液の二つに分かれる。そのほか胸膜腔には、外傷などで血液がたまったり(血胸)、感染症でうみがたまる(膿胸)こともある。治療には、液体を抜き取る胸腔ドレナージが有効。たいていは一番下の左右の肋骨間に局所麻酔をほどこし、細い注射針を胸膜腔まで刺して胸水を抜く胸腔穿刺術が施される。液量が多い場合は、細いチューブを挿入することもある。2012年3月、狭心症による冠動脈バイパス手術を終えた天皇陛下が、手術にともなう胸水貯留を改善するため、宮内庁病院で2回にわたり胸腔穿刺術を受けた。