居住者の大半を高齢者が占める高齢化した団地のことを指すが、正式の用語ではない。人口比率で65歳以上の高齢者が50%を超え、さらに人口流出などによって過疎化したため、共同体の機能が薄れて社会生活を営むことが困難な山村や離島の集落を、大野晃・長野大学教授が、1991年に限界集落と定義している。これと同様に、居住者の新陳代謝が進まず高齢者だけの世帯が残されて過疎化した、いわば「都市の限界集落」が増えて、高齢化した都市の特徴を一段と強めている。86年時点で、全国233万9000世帯であった「高齢者のみの世帯」は、現在では843万4000世帯と毎年増加の一途をたどる(「生活基礎調査」2006年)。そして大都市部には、入居者の大半が高齢者という団地も増えてきている。東京都の調査によると、1981年以前に建てられた共同住宅、特に単身者用の住宅では一段と高齢化が進んでいるという。これとともに「限界化」の象徴と見られるのが、孤独死の増加である。東京都監察医務院によれば、23区内で発生した孤独死5489人のうち、65歳以上が3093人(56.3%)を占めた(2007年)。プライバシーが保たれた集合住宅であるがゆえに、ネットワークが希薄化しがちな都市が抱える病理の一つともいえる。自治体や自治会はサポートネットワークを立ち上げ、高齢者世帯の見回り巡回サービスや支援サービスを行っている。