人や鳥、動物の消化管内にすむ腸内細菌。現在までに2000以上の血清型、1800以上の菌型が確認され、総称してサルモネラ属菌と呼ばれる。日本の感染症法によって3類感染症に指定されている、腸チフス、パラチフスの原因菌もその仲間である。また別種のサルモネラ菌は、食物などに付着して人に感染し、下痢や嘔吐(おうと)をともなう急性胃腸炎を引き起こすが、これをサルモネラ感染症、またはサルモネラ感染性食中毒という。国内では魚介類が媒介する、腸炎ビブリオと並ぶ代表的な食中毒原因菌で、とくに学校や病院、福祉施設などで夏季に多発する。動物のふんに汚染された牛肉、鶏肉、卵などを、十分な加熱調理なしに摂取することが主な原因だが、最近では、調理者の手指や調理器具を介した発生例もある。感染すると、通常8~48時間の潜伏期で発病し、38度以上の発熱、水様性下痢、血便、腹痛、嘔吐などの症状が4~7日間続く。健康な成人なら自然回復することもあるが、高齢者や小児、免疫力が低下した人は重症化しやすく、意識障害や、全身に症状がまわる敗血症の危険もあるため、入院治療が必要となる。予防のためのワクチンはなく、治療も症状を緩和する対症療法が中心となる。