心臓と左右の肺を、つながった状態で脳死の臓器提供者から摘出し、患者にそっくり移植する外科治療。2009年1月17日、心臓と肺の両方に重い病気をもった30歳代の男性が、大阪大学医学部附属病院で国内初の心肺同時移植手術を受けた。臓器移植法に基づく手術としては79例目。この男性の病気は、先天性の心疾患が原因で肺動脈の血流量が増加し、肺高血圧症を併発するアイゼンメンジャー症候群で、病状が進むと右心室の機能低下を招く。心肺同時移植による治療は、臓器の単体移植に比べて感染症や拒絶反応、手術後の出血などのリスクをともなうが、経過がよければ普通の生活を送れるようになる可能性も高い。アメリカやヨーロッパでは一般的な治療法として確立され、すでに3000件以上の実施例がある。日本でも03年から社団法人日本臓器移植ネットワークが、移植を希望する患者の登録を行っている。しかし、脳死での臓器提供者が年間十数人と極めて少なく、提供者の年齢、血液型の一致、臓器の状態といった制約もあって、国内での実施は困難といわれてきた。