ヒトに感染して悪性腫瘍を作る、ヒトTリンパ向性ウイルス1型(HTLV-1)によって引き起こされる血液のがん。白血球の一種であるリンパ球に感染し、発症すると大半が白血病化する。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)ともいい、日本では1977年に初報告され、2009年には難病指定された。主な感染経路は母乳で、ウイルスの感染者である母親が、4カ月以上母乳で育てた乳児への感染率は15~20%とされている。そのほか夫婦間の性交渉でもうつる。発症するとリンパ節や肝臓、脾臓の腫れ、皮膚の病変、下痢や腹痛、血液中のカルシウム値上昇による全身倦怠感、便秘、意識障害などの症状が出る。抗がん剤や骨髄移植などの治療が行われるが、根治は難しく、ほとんどの患者が2年以内に死亡する。ただし、潜伏期間が約50年と長いため発症年齢は40歳以上、生涯発症率も3~5%程度である。20年前は西南日本に感染者が多かったが、2009年の厚生労働省の調査で、九州地方の感染者が減少し、関東地方など大都市圏で1.5倍に増えていることが判明した。また、国内の感染者数は約108万人、発症者数は年間1100人前後と推定されている。日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会では、全妊婦に対し、健診時に血液検査を行うよう産科医向け診療指針の改定を進めている。