生まれつき特定の物質を分解、吸収できない病気により、母乳や普通の粉ミルクでは育たない乳児のため、成分を調整した粉ミルク。生命維持や発育に必要な栄養補給のほか、病気そのものを治療する医薬品としての機能も備えている。日本では国の助成事業として、1980年に特殊ミルク共同安全開発事業が発足。生後の検査などで、先天性代謝異常症と診断された患児は、医療機関からの申請で特殊ミルクの無償供給を受けることができる。対象となるのは、たんぱく質・アミノ酸の代謝異常を起こすフェニルケトン尿症、ホモシスチン尿症、糖質の代謝異常を起こすガラクトース血症など27疾患。2012年時点では、各疾患に応じて25品目の特殊ミルクが開発、用意されている。これらは登録特殊ミルク(登録ミルク)とも呼ばれ、恩賜財団母子愛育会(本部・東京都港区)の特殊ミルク事務局が、申請受付と供給管理を一括して行う。また、指定疾患以外でも、心疾患や腎不全、小児難治性てんかんなどの患児には、国内の乳業会社が自費で協力製造した13品目の登録外特殊ミルク(登録外ミルク)が無償提供される。食物アレルギーや下痢症などの乳児向けに、市販品の特殊ミルクもある。