船舶の航行の安全と船員の労働保護にあたり、船長の職務権限と船内の規律を定めた法律(1947年制定)。とりわけ後者にいたっては、船舶の航行の安全のために、船長には船員あるいはその他の者に対して懲戒権・強制下船権などが認められている。「危険物を持った海員にその放棄を求め」(「船員法」第25条)、「危害を及ぼそうとする海員に対する必要な措置をとること」(同26条)も認め、さらに27条には「必要があると認めるときは、旅客その他船内にある者に対しても、前2条に規定する処置をすることができる」とされている。日本の調査捕鯨に妨害活動を行うアメリカの環境団体シー・シェパード(SS)に対して、日本政府は有効な措置を講じることがなかった。しかし2008年1月、南極海で調査捕鯨活動を行う「第二勇新丸」に、SSの活動家2人が乗り込んだため、船長は船員法に基づいて身柄を拘束した。2日後に活動か家らはオーストラリア政府に引き渡したものの、すぐに釈放された。さらに10年2月、同じく南極海で調査捕鯨船「第二昭南丸」に抗議船を衝突させるなどして妨害活動を行っていたSSの男性活動家が水上バイクで接近し、捕鯨船のネットをナイフで破って船内に侵入したことから、船長は身柄を拘束し、24時間にわたり監視下に置くこととなった。船舶や航空機が所属する国を旗国「(flag state)といい、たとえ公海上であっても日本船籍の船上では日本の法律が適用される。これを旗国主義(flag state doctrine)という。