既存の治療薬が効かない、薬剤耐性結核菌による感染症。2006年に初めて報告された。結核治療に使う2~4種類の薬のうち、最も効果的なイソニアジドとリファンピシンの2剤が作用しない結核を、多剤耐性結核(MDR-TB)というが、それよりも耐性が進んでおり、化学療法は極めて困難という。結核菌は、1種類の薬だけで治療を続けると、染色体遺伝子が突然変異し、一定の率で薬剤耐性菌が現れる。その時点で別の薬に切り替えると、多剤耐性菌へと進化して増殖する。つまり、これらの結核は、不適切な治療が生み出したものと考えられる。日本における結核全体の治癒率が80%以上なのに対し、超多剤耐性結核の治癒率は30%程度である。10年3月、世界保健機関(WHO)は、世界58カ国で超多剤耐性結核を確認し、感染者は推定で年間2万5000人にのぼると発表した。また、08年に多剤耐性結核に感染した人は年間44万人、うち死者は15万人との推計も報告している。