1950年代以降に国などが発注したトンネル工事が原因で、じん肺を患った元作業員らが、国と受注企業などを相手に損害賠償を求めていた訴訟。じん肺は、吸い込んだ粉じんが肺に蓄積し、酸素を取り込む機能が低下する病気で、完治は難しいとされる。ゼネコンなどの受注企業に対する訴訟は、2003年までに和解が成立。国を相手取った訴訟が、全国14の地方裁判所、高等裁判所で係争中だった。しかし、06年7月の東京地裁の賠償命令を皮切りに、国の不作為の責任を認める判決が相次ぎ、国は、粉じん障害防止規則(厚生労働省令)を改正し、工事現場での粉じん濃度測定や、高性能防じんマスクの使用義務付けなど、被害防止対策を図ることを表明。原告側が損害賠償請求を放棄して、07年6月20日、東京高裁で和解が成立した。各地の訴訟も和解に向かう見込みだが、厚生労働省は不作為の責任を認めておらず、被害救済のための基金設置には難色を示している。