A型インフルエンザウイルスH3N2が、1968~70年に引き起こしたパンデミック(世界的大流行)。68年6月に香港で爆発的に蔓延し、8~9月にオセアニアや東南アジアへと感染地域が拡大。12月にはアメリカでもピークを迎えた。68~69年に襲った第1波は比較的軽い被害ですんだが、70年の第2波で大きな被害を出し、最終的に世界全体で100万人以上が死亡した。日本では当時の厚生省が、流行開始後の68年7月末より、罹患(りかん)した貨物船員を停留させるなど水際作戦を展開。しかし、国内侵入は防げなかった。H3N2ウイルスは、57年に200万人以上の死者を出したアジアかぜの原因であるH2N2から変異した、いずれも当時の新型ウイルスで、現在もなお、香港A型として流行を繰り返している。このほか、20世紀にパンデミックを招いた新型インフルエンザでは、1918年に2000万人以上の死者を出したスペインかぜ(H1N1)がある。2009年6月11日、世界保健機関(WHO)が、新型豚インフルエンザに対する警報フェーズを最高レベルの6に引き上げ、香港かぜ以来41年ぶりのパンデミックが宣言された。