知的障害や精神障害などがありながら、福祉の支援を受けられずに社会で孤立し、生活に困窮して盗みなどの犯罪を繰り返してしまう人たちのこと。累犯とは重ねて罪を犯すという意味。こうした問題が注目されるようになったきっかけは、政策秘書給与の流用事件で2001年に実刑判決を受け、刑務所に1年2カ月服役した山本譲司元衆議院議員が、出所後に著した「獄窓記」(03年、ポプラ社)や「累犯障害者」(06年、新潮社)から。山本元議員も参加して06年に行われた厚生労働省の科学研究費補助金「虞犯・触法等の障害者の地域生活支援に関する研究」(主任研究者・田島良昭)によれば、15カ所の一般的刑務所入所者2万7024人のうち、知的障害者またはその疑いがある者は410人、うち再犯者は285人(69.5%)を占めていた。一方、こうした負の連鎖を断ち切るべく、長崎県では前出の研究班の田島代表が運営する社会福祉法人「南高愛隣会」などが中心となって、累犯障害者を支援する取り組みを行っている。一つは出所者を福祉につなぐ「出口支援」であり、NPO法人長崎県地域生活定着支援センターという組織が窓口となっている。また、刑務所に収監される前に福祉の手を差し伸べる「入り口支援」もある。こちらは弁護士や精神科医、福祉関係者らによる「判定委員会」が、刑事被告人の裁判中に福祉での更生を促す意見書を裁判所に出すもので、「長崎モデル」と呼ばれている。さらにもう一歩踏み込んで、12年からは、捜査段階から福祉の専門家が立ち会ったりする「新長崎モデル」と呼ばれる取り組みも始まった。