目、口、皮膚などに、再発性の炎症ができる病気。日本、韓国、中国、中近東・地中海沿岸諸国でよく見られるため、シルクロード病とも呼ばれている。1937年、トルコ人医師のH.ベーチェットによって提唱された。免疫系が自らの組織を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つで、発病すると、(1)口腔内の粘膜や唇、舌、歯肉などに口内炎(アフタ性潰瘍)がほぼ98%の確率でできるほか、(2)外陰部に潰瘍ができる、(3)全身に痛みやかゆみを伴う発疹が出る、(4)両目に炎症による病変が起こる、という4つの主症状が慢性的に続く。とくに眼症状は重要で、失明に至る場合もある。そのほか関節炎、血管・神経・内臓の病変といった副症状も見られ、総称してベーチェット症候群(Behcet's syndrome)という。男女とも30歳前半をピークに、20~40歳代で発症しやすい。日本では医療費給付が受けられる難病(特定疾患)に指定されており、2008年3月末の受給者数は約1万7000人。長らく原因不明とされてきたが、10年7月、発症に関係する遺伝子の変異を、横浜市立大学や北海道大学などの共同研究チームがゲノム解析により発見した。