蚊の3分の1ほどの大きさのサシチョウバエという昆虫が媒介して、ヒト、イヌなどの哺乳動物が感染する人獣共通感染症(zoonosis)、または人獣感染症の総称。世界中の熱帯地方および一部の温帯地方で見られる症候群で、感染者数は1200万人と推計される。動物に感染した病気が二次的にヒトにもおよぶ感染症を人畜共通感染症または人畜感染症とも称し、一般的には人獣(共通)感染症といわれる。リーシュマニア症の病原体はリーシュマニア原虫で、症状によって次のようなものに大別される。皮膚リーシュマニア症は、感染したサシチョウバエに刺された部位に数週間~数カ月後に傷が生じてふちが盛り上がり、中央部が潰瘍化する。放置しても傷は自然治癒するが、完治するには数カ月~数年を要し、しばしば傷痕が残る。粘膜皮膚リーシュマニア症は、皮膚から鼻口咽頭などに転移すると、数カ月~数年で粘膜組織に病変が生じ、鼻中隔や口蓋(こうがい)が欠損するなどの傷痕を残すこともあり、皮膚症状が治癒しなければ完治しない。90%以上がアフガニスタン、アルジェリア、ブラジル、イラン、イラク、ペルー、サウジアラビア、シリアで見られる。内臓リーシュマニア症は、ヒンディー語でカラ・アザール(kala-azar)、黒熱病、ダムダム熱とも呼ばれ、原虫が皮膚からリンパ節、脾臓、肝臓、骨髄に広がり、カラ(黒い)アザール(病気)とあるように、副腎皮質不全からメラニンが沈着し皮膚が黒くなり、治療をしなければ致死の病である。90%以上がバングラデシュ、ブラジル、インド、ネパール、スーダンで見られる。リーシュマニア症の名称はイギリス陸軍軍医のリーシュマン(William Leishman 1865~1926年)にちなむとされる。