ウイルス感染で発症する成人T細胞白血病(ATL)を、ワクチンによって治療する方法。ATLは、ヒトT 細胞白血病ウイルスI型(HTLV-1)に感染した人の約5%が、約60年の潜伏期間ののち発症する血液がん。免疫機能に関与するT細胞(リンパ球の一種)が、がん化するため発症後は免疫力が急激に低下し、進行が早いと1年以内に感染症などで命を落とす。九州や沖縄地方に患者が多く、国内の感染者数は推計100万人以上、毎年約1000人が死亡している。根本的な治療法がなく、抗がん剤治療や骨髄移植に頼ってきたが、2001年ごろからワクチン治療の研究が進められてきた。がん化したT細胞は体内で異物として認識されず、免疫物質の攻撃を受けにくい特性をもつが、ある種のたんぱく質が働くとそれが標的(抗原)になることが判明。そのたんぱく質をNY-ESO-1といい、ワクチンとして患者に接種すると、正常な免疫細胞が、がん化したT細胞を発見、攻撃し消滅させてしまう。こうした研究成果を応用し、大阪大学免疫学フロンティア研究センターと大阪大学医学部付属病院が、12年内の開始を目標に国内初の臨床研究を計画。11年8月には、厚生労働省もATL発症予防ワクチン開発の研究班を設立した。