がん抑制遺伝子の生まれながらの病的変異によって、乳がんや卵巣がんを高リスクで発症する病気。乳がん全体の5~10%を占める遺伝性腫瘍の一つで、BRCA1、BRCA2という二つの遺伝子が要因とされる。これらのどちらかに病的変異があると、50%の確率で子や孫に伝わることも、最近の研究で判明した。遺伝的要因のない一般のがんと異なる特徴は、(1)若年性乳がんを発症する、(2)左右の乳房に非転移性がんを個別に発症する、(3)当人の近親者に2世代以上にわたり乳がんや卵巣がん患者がいる、(4)乳がんと並行して卵巣がんも発症する、などがあげられる。治療には早期発見が有効で、現在はBRCA遺伝子を調べる検査を実施する医療機関もある。可能性ありと診断された場合は、定期検査や検診が重要となり、発症前に乳房や卵巣・卵管を摘出する予防的治療も選択肢として提示される。ただし遺伝子に病的変異をもつ人が、必ず乳がんや卵巣がんを発症するわけではなく、海外には70歳までに乳がんを発症する割合を36~85%とした報告もある。2012年10月、日本でも発症傾向を分析するデータベースを作るべく、昭和大学、慶應義塾大学、がん研有明病院などの医師が研究組織を設立した。