犬や猫などの口の中に常在する、カプノサイトファーガ・カニモルサスという細菌によって起こる感染症。ヒトにもうつる人獣感染症の一つで、菌をもった動物にかまれたり、引っかかれたりすると、ごくまれに感染・発症することがある。初めて報告されたのは1976年で、比較的最近になってから研究が始まったため不明な部分が多く、動物との接触がはっきりしないのに発症した、という例もある。現在までに世界中で約250人の患者が確認されたが、ヒトからヒトへの感染は報告されていない。発症後は発熱、倦怠感、腹痛、吐き気、頭痛などの症状に見舞われ、重症化すると敗血症や髄膜炎を起こして死亡するケースもある。とくに敗血症が急激に進むと、致死率は約30%まで高まる。糖尿病やアルコール依存症などの慢性疾患、免疫異常疾患、悪性腫瘍にかかっている人、脾臓摘出手術を受けた人、高齢者などが重症化しやすい。予防には動物との過度のふれあいを避け、手洗いを励行する。日本では2002~09年の8年間に14人が発病し、うち6人が死亡したことが国の調査で判明し、厚生労働省が注意を呼びかけている。