蜂毒や食べ物などで起こる、アナフィラキシーと呼ばれる劇症アレルギーを緊急的に緩和する、自己注射タイプの補助治療薬。アメリカの製薬会社ファイザーが製造し、日本ではマイラン製薬(本社・東京都港区)が輸入販売する。一般名はエピネフリンまたはアドレナリン。2003年に国内認可され、06年には食物アレルギーへの使用も認められた。容器は筒形で薬液と注射針が内蔵されており、針側の筒先を患者の太もも前外側に強く押しつければ、適正量の薬液が自動的に注射できる。緊急時には衣服の上からでも注射が可能。主成分のアドレナリンには血圧を上げ、交感神経を興奮させる作用があるため、アナフィラキシーにともなう血圧急低下、気道閉塞(へいそく)など、生命にかかわる重篤な症状を緩和できる。ただし頭痛やめまい、嘔吐(おうと)、発汗などの副作用があり、重大なものでは呼吸困難、致死的不整脈が出ることもある。そのため高齢者や心疾患、肺気腫、高血圧症の患者への投与には注意が必要。妊産婦には投与しないことが望ましい。使用後は必ず医療機関を受診して、適切な治療を受ける必要がある。注射できるのは患者本人か保護者のみだが、教師、保育士、救急救命士など、それに代わり得る適切な者が緊急的に手を貸すことは医療行為にあたらない、との法的解釈もある。購入には公的医療保険が適用される。