住宅を確保しようとすると、独力では対応困難な事態に直面する人々。法的には「住宅確保要配慮者」と呼ぶ。2007年7月に公布・施行された「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティーネット法)」第1条には「低額所得者、被災者、高齢者、障害者、子どもを育成する家庭その他住宅の確保に特に配慮を要する者」と定義されている。「その他」には、母子・父子家庭や犯罪被害者、外国人などが含まれる。1990年代半ば、国の住宅政策が、公営住宅・公的融資中心から市場を通じた住宅供給へと転換したことにより顕在化してきた。しかし、住宅における需給には極端な偏りがあり、総務省の調査によれば2008年における全国の空き家は約716万戸。一方で、安価な家賃の公営住宅応募倍率は全国平均で約9倍。最高の東京都では29.8倍にも達している(10年度、国土交通省調査)。逆に貸し手側では、高齢者の孤立死や、家賃滞納、近隣住民の苦情などを恐れて住宅弱者の入居を拒否することが多い。住宅セーフティーネット法では、国及び地方公共団体は、公的賃貸住宅の適切な供給の促進や、民間賃貸住宅への円滑な入居の促進について、必要な施策を講ずるよう努めなければならないと定められている。そこで近年一部の自治体では、業界団体や生活支援のNPO法人などと連携し、物件情報の提供や保証料の一部負担、空き室の借り上げと低額での転貸等を通じて需給の溝の解消を図っている。光熱水道費や家賃を助成するなどの生活支援と併用する自治体もある。また国土交通省や東京都では、耐震やバリアフリーなどの改修費用を助成し、入居希望者の誘導を狙うが、現状は思うように進んでいない。