温暖化の要因の一つとして、家畜から排出されるゲップ(メタンガス)が注目されている。NASA/ゴダード宇宙科学研究所(GISS)による、9種の動物(肉牛、乳牛、水牛、羊、山羊、ラクダ、豚、馬、トナカイ)の頭数密度をもとにした推定によれば、牛のゲップ由来のメタンの総排出量は年間で75.8テラグラム(10の12乗)という。牛のゲップは第一胃(ルーメン)から発生するが、その排出を抑制することは、温室効果ガスの削減にも通じることながら、効率的な方法がなかった。2008年3月、出光興産と北海道大学は牛のルーメンから発生するメタンを90%抑える天然素材を発見したと発表。この天然素材はカシューナッツの殻から抽出した植物油と、シュードザイマ(酵母菌の一種)が生み出すバイオサーファクタントと呼ばれる界面活性剤の2種類であり、11年度に商品化の予定で研究が進んでおり、温暖化防止の面からも期待されている。地球温暖化は、人間の活動によって温室効果ガスが大気中に増加し、地表面の温度が上昇することから生じる。IPCC第三次評価報告書によると、温室効果ガスは、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、対流圏オゾン、クロロフルオロカーボンなどからなり、このうち地球温暖化に最も多く寄与しているものがCO2で、全体の60.1%、メタンの19.8%と続く。メタンの総排出量のうち、牛など家畜によるものが15~20%を占めるとされる。