がん患者の呼気、体臭に含まれる特有のにおいを、かぎ分けるよう訓練した使役犬。人間の1億倍まで感知できるという犬の嗅覚が、がん診断に役立つ可能性は、1989年、イギリスで初めて報告された。以後、欧米で研究が行われ、2006年、アメリカの研究者マイケル・マカロックらは、肺がんと乳がんの患者の呼気を識別する訓練を、生後7~18カ月の犬5頭に施し、最終的に肺がん99%、乳がん88~98%という識別率を達成した。日本でも水難救助犬などを訓練するセントシュガー犬舎(千葉県南房総市)が、05年にがん探知犬育成センターを開設。ここで訓練された9歳雌のラブラドルレトリーバー「マリーン」に対し、九州大学医学部の研究グループが、大腸がん患者の呼気・便汁で臭気判定の実証実験を行ったところ、呼気検体36セット中33セット、便汁検体では38セット中37セットをかぎ分けた。将来的には、犬が感知するにおい物質を解析し、精度の安定したセンサーの開発が期待される。がん探知犬育成センターでは、がん探知犬による臭気判定を、1カ月10人まで実施。対象は再発予防のみで、電話かメールによる予約が必要。