免疫の暴走と訳される。サイトカインとは、cyto(細胞)とkine(動作)からなる造語で、細胞から放出されさまざまな細胞間に相互作用をもたらすたんぱく質因子の総称である。サイトカインは標的の細胞に働きかけて、免疫、炎症、生体防御などの面で重要な役割を果たすもので数百種類があり、その代表としてインターフェロン、インターロイキンが知られている。特定のサイトカイン遺伝子にスイッチが入るとサイトカインが合成されて、体液中に分泌される。分泌されたサイトカインは体液で運ばれて、標的となる細胞のレセプター(受容体)に働きかけ、情報を伝えて特定の遺伝子の活性化を促し、標的細胞に生理的変化をもたらすことになる。免疫もこうした仕組みで機能しているが、新型インフルエンザのH1N1やH5N1ウイルスの場合、免疫を持たない人にはサイトカインが過剰に分泌されて暴走化し、自己を攻撃する作用をもたらすとされている。免疫力の弱い高齢者より、とりわけ免疫力の強い若者については、免疫系が過剰に反応し、全身に嵐のように混乱した状態をもたらすことから、サイトカイン・ストームと呼ばれる。かつて1918~19年にかけて世界的に流行して多くの死者を出したスペイン風邪で、青年層に被害者が多かったことも、サイトカイン・ストームによるものと見られている。新型インフルエンザには、強毒性とサイトカイン・ストームを起こす性質があり、高い死亡率につながる可能性が高い。