2009年4月にメキシコ、アメリカで発生が確認され、世界的大流行(パンデミック)を引き起こしたインフルエンザ。ウイルスは1918~19年に流行したスペインかぜに起源をもつAソ連型と同じH1N1型だが、豚の間でのみ感染する亜型が変異し、人への感染力を得た新型であることが判明。そのため当初は、豚インフルエンザ(swine influenza)と呼ばれていたが、2009年4月30日、世界保健機関(WHO)がインフルエンザA(H1N1)に改めた。基本症状は季節性インフルエンザと同じで、38度以上の発熱、せき、鼻水、全身の倦怠感や筋肉痛など。ただし妊婦、小児、糖尿病や心臓病などの基礎疾患がある人は重篤化しやすい。10~19歳に感染例が多いことも特徴。潜伏期は2~7日間で、発症後、感染力が消えるまでには7日間程度を要する。弱毒性と見られてきたが、アメリカとカナダでの致死率は推定0.5%で、季節性インフルエンザの0.1%以下を大きく上回り、1957~58年に世界中で100万人以上の死者を出したアジアかぜに匹敵する。治療薬のタミフルやリレンザは有効。しかし、従来のAソ連型ウイルス用ワクチンは効果がない。2009年8月、日本での1医療機関あたりの患者数が、流行開始の目安1人を超えて1.69人に達したため、厚生労働省が異例の流行期入りを発表した。