「こうりょしぼうにん」と読む。「行旅」は「旅行」もしくは「行路」に同じ。行路死亡人ともいい、身元不明や引き取り人不明の遺体を意味する法律用語。いわゆる病気による「行き倒れ」や身元を隠しての自殺によるものなどを含む身元不明の死亡人があった場合の取り扱いとして、「行旅病人及行旅死亡人取扱法」(1899<明治32>年)があり、「行旅病人は其の所在地市町村之を救護すべし」(第2条)と定められている。身元不明の遺体があった場所を管轄する市町村長は、死亡人の身体的特徴や発見時の状況などを付して官報に公告し、火葬などの処置をし遺品とともに管理しなければならない。行旅死亡人の多くは、さまざまな事情により、みずからの身分を意図的に消失させているケースが多く、たとえ公告されても、身元引受人が現れて身元が判明することはまれである。遺体は火葬などの処置をされ、一定の期間保管された後、無縁仏として埋葬される。行旅死亡人の統計データは少なく、1998年度に全国で1152人、2003年度の東京都だけで182人あったとされる。家族関係の破綻や不況などによる失職を契機に失踪にいたるものと推定され、近年ますますその数は増えているものとみられる。