キク科ゴボウの果実で、中国名では悪実(あくじつ)ともいう。成熟した種子を乾燥させたものを、漢方生薬として用いる。主成分はパルミチン酸、ステアリン酸などの飽和脂肪酸で、口に含むと苦味や油分を感じる。解熱、解毒、去痰、利尿などに薬効があり、通常は感冒、咳(せき)、咽喉痛などに処方する。漢方薬の消風散(しょうふうさん)に配合して、湿疹やじんましん、麻疹、アトピー性皮膚炎の消炎にも使う。国立がん研究センター東病院では、牛蒡子の活性成分の一つアルクチゲニンという物質に、抗がん剤が効きにくい膵臓(すいぞう)がんの増殖を抑える作用があることを、マウス実験で突き止めた。膵臓がん細胞は、酸素や栄養素が不足した環境下で増殖するため、エネルギー代謝を変化させて飢餓耐性を獲得するが、アルクチゲニンはそのメカニズムを阻害し、がん細胞を死にやすくするという。また、熱に弱いがん細胞を、41~43℃に温めて衰弱死させる、温熱療法の効果を高めるとした研究報告もあり、今後の検証が期待されている。