股関節は広範囲の可動を確保する球関節であるため、大腿骨先端の球体部分を受ける骨盤の寛骨臼、すなわちジョイントとなるくぼみは深くない。つまり、そのままでは関節がはずれやすい構造であるため、これを防ぎつつ、なおかつかみ合わせをよくしながらクッションの役割ももたせるべく、弾力性をともなう柔らかなリング状の線維性軟骨が骨盤側から大腿骨頭を包み込むかたちをとっており、この軟骨を股関節唇(こかんせつしん)という。ここに強い力や無理な動作が加わることで、断裂してしまった状態が股関節唇損傷であり、症状としては、まずはうずくような痛みや関節の引っかかりを感じるようになり、その破片が関節内にはさまると、激痛をともなうようになる。従来のX線画像検査での診断はきわめて難しく、長らく原因不明の股関節痛とされてきたが、昨今では核磁気共鳴画像(MRI)撮影に造影剤を併用することによって、断裂部分から造影剤が流れ込み、患部の状態が判別できるようになっている。治療に関しては、まずは炎症止めなどを服用し、大きな動作を避けて患部への負担を軽減するような保存療法で対処するが、改善しない場合は、小さく切開し、内視鏡を用いて、関節唇の一部を切除したり断裂個所を縫合したりする処置で治療が可能になっている。また、血流がある部位であれば、治療後に損傷個所が再生する可能性も考えられるという。2010年6月28日に、お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志が、「左股関節唇損傷」の手術を受けるために1~2カ月休養することが発表され、その聞き慣れない病名が各種メディアで取り上げられた。