病気の症状が出やすい時間帯や、副作用を抑えつつ薬の効果が大きくなるようなタイミングを狙って治療を行うこと。クロノセラピー。たとえば、気管支ぜんそくは夜中から明け方に発作が起こりやすいことから、剤形(薬の形)を工夫することで、夕方ごろに服用すると明け方に血中濃度が最大になるような薬が用いられる。関節リウマチも、しばしば早朝に痛みの増加が見られるが、起床時間に合わせて鎮痛効果が得られるよう設計された薬などがある。特に、がんに対する時間治療に注目が集まっている。抗がん剤を用いたがんの化学療法では、がん細胞も正常細胞も攻撃してしまうため、常に副作用の問題がつきまとう。そこで、がん細胞の増殖する時間帯を狙って抗がん剤の種類や投与量を調節する方法などが研究されている。時間治療は、ヒトの血圧や体温、睡眠などを約24時間周期で制御している体内時計のはたらきに着目した治療法であり、近年、こうした知見に基づく時間薬理学(chronopharmacology)の研究が活発になっている。