医薬品による副作用疾患の一つで、皮膚や目の周り、粘膜への障害を発症することから、皮膚粘膜眼症候群(muco-cutaneo-ocular syndrome)とも呼ばれる。年間で100万人当たり1~6人が発症するとされ、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬、あるいは市販薬も含め、さまざまな医薬品が原因となる重度のアレルギー反応と考えられているが、一部のウイルス感染などでも同様の症状がみられることがあり、くわしいメカニズムはわかっていない。その症状は、38度以上の高熱をともない、目の充血、目やに、まぶたの腫れ、目の開けづらさなど、まず目の周りに疾患が現れる。さらに、それと同時期か少し遅れて、唇や陰部のただれ、それにともなう排尿や排便時の痛み、のどの痛みなど、各部の粘膜に症状が現れて、やがて体表の広い範囲に赤い発疹や水ぶくれができる。症状が進むと、皮膚の障害が全身の10%以上に及ぶ中毒性表皮壊死症(TEN ; toxic epidermal necrolysis)を起こし、臓器障害や失明なども併発することがあり、ときに死に至る。原因と考えられる医薬品を服用してから2週間以内に発症するケースが多いが、それより短い場合も長い場合もある。これらの症状のいくつかにでも当てはまった場合は、至急に医師に相談する必要があり、その際には服用した医薬品の名前、服用の回数や経過時間を報告するのが望ましい。治療方法は、症状の重さに応じて、ステロイドの投与、自己免疫反応を抑える血液製剤を投与する免疫グロブリン静注療法(IVIG療法 intravenous immunoglobulin therapy)、血液中の血漿を新鮮な血漿と交換する血漿交換療法(plasmapheresis)などがほどこされ、点眼薬なども併用していく。製薬会社などからの報告に基づく厚生労働省の集計によれば、2009年8月~12年1月までの2年半の間に、スティーブンス・ジョンソン症候群と中毒性表皮壊死症による被害は全国で1505人となり、そのうち131人が死亡したという。