ヒトや動物に感染して、鼻かぜ程度の上気道炎や胃腸炎などを引き起こすウイルス。ゲノムとして1本鎖のリボ核酸をもつRNAウイルスで、直径約60~200ナノメートルの円形または楕円形をなす。表面はエンベロープと呼ばれる薄膜に覆われ、そこから出た花弁状の突起が王冠(ラテン語でコロナ)に似ているため、コロナウイルスと呼ばれる。1960年代中ごろに初めて報告された。従来の種は病原性が低く、免疫力が弱い幼年の動物以外は致死的感染を起こさないとされてきた。しかし、何らかの原因で突然変異した新種に、強い感染力と病原性をもつものがあり、2003年に世界各地で多くの死者を出した重症急性呼吸器症候群(SARS)の病原であるサーズウイルスも、その一つとされている。12年9月、イギリス国内でサーズウイルスと同じ、肺炎や肝臓機能の急激な低下を引き起こす新種のコロナウイルスが、イギリス健康保護局(HPA)の検査で発見された。世界保健機関(WHO)が情報収集を行ったところ、11月30日までにヨルダン、サウジアラビア、カタールの3カ国で9人が感染、うち5人の死亡が確認されている。