東北大学の鈴木治教授らが共同開発した、骨の再生促進作用をもつ人工合成骨補填材。骨は、コラーゲンなどの有機物と、ハイドロキシアパタイト(Hap)などの無機物が複合する組織で、今まで、骨にできた腫瘍を切除するような場合、Hapやそれに類する物質を配合したセラミックスなどで人工骨を作り、補填を行ってきた。しかしながら、骨との親和性や治癒にかかる時間に難点があり、患者自身の別の場所の骨を採取して、切除した個所に移殖するという、負担の大きな治療法から離れることはできていない。そこで昨今、体内で骨が形成される際に存在することが発見された、Hapが生成される過程の前段階の物質「リン酸オクタカルシウム(OCP)」に注目が集まっている。OCPは顆粒状もしくは骨の欠損部の形状に合わせて加工して用いるもので、骨を作る細胞を活性化し、新しくできてくる骨と置き換わっていく性質をもつ。鈴木教授らはすでに、従来困難とされていた純粋なOCPの合成方法を確立しており、今回、このOCPを構成するカルシウムやリン酸の割合を調節しつつ、その一部を規則的な結晶構造をもたない状態にした「低結晶性リン酸オクタカルシウム(低結晶性OCP)」を開発。従来のOCPの約1.7倍の骨形成能を示すことを確認し、その成果を2008年11月25日に報道発表した。