スイス南部の代表的な山岳リゾート、ツェルマットからサンモリッツまでの約270キロメートルを、約8時間かけて結ぶ観光列車。平均時速約34キロで走るため、「世界一遅い特急」として知られている。グレーシャー・エクスプレス、氷河急行とも言う。以前のルートではフルカ峠を越える際に、ローヌ氷河を目前にできたためこの名が付いたが、1982年に新フルカトンネルが完成すると、ローヌ氷河は車窓から見られなくなった。海抜約600~2000メートルの、標高差1400メートル以上ある山岳地帯を、7つの谷、291の橋、91のトンネルを通り抜け、車窓から、アルプスの名峰や、急峻な渓谷や急流、美しい森や高山植物の咲く高原、牧草地など、千変万化する起伏に富んだ絶景を楽しめる。年間約25万人の観光客が利用し、スイス旅行の目玉の一つとなっていて、日本においても中高年のツアー客を中心に人気が高い。2010年7月23日、ツェルマットからサンモリッツに向かう氷河特急がフィーシュで脱線事故を起こし、日本人乗客の女性1人が死亡、42人(うち日本人38人)が負傷した。同年7月30日、スイス政府の事故調査当局と、運営する鉄道会社マッターホルン・ゴッタルド鉄道は、運転士の速度超過運行が事故原因であるとする暫定調査結果を発表した。