肺や腹部の臓器を薄く覆っている、胸膜、腹膜などの表面組織(中皮)に腫瘍ができる病気。腫瘍の形状や進行の仕方によって、良性と悪性とに分けられるが、一般に中皮腫といえば、がんの一種である悪性中皮腫をさす。また発生場所により、胸膜中皮腫、腹膜中皮腫、心膜中皮腫などに分けられる。このうち最も多いのは胸膜中皮腫で、全体の80%を占める。次いで腹膜中皮腫が20%を占め、その他の部位に発生するものはごくまれである。悪性胸膜中皮腫は、びまん性といって、腫瘍が胸膜に沿って染みこむように広がるケースが多く、胸水が大量にたまり、呼吸困難や胸痛、せき、発熱などをともなう。治療は進行レベルに応じて外科手術、放射線治療、抗がん剤治療などを行うが、回復の見通しはあまりよくない。ただし良性の場合や、悪性であってもびまん性でない場合は、外科手術での治癒が期待できる。胸膜や腹膜の中皮腫は、そのほとんどがアスベストの曝露(吸引)により発生し、病気が発生するまでに最短で20年、平均で約40年かかる。そのため中皮腫による死者は、65歳以上の高齢者が7~8割を占め、死亡率では男性が女性よりも約4倍高い。