強迫的な衝動に突き動かされ、自己をコントロールできずに、性行動をくり返してしまう精神疾患。性依存症、性的強迫症ともいう。アルコールなどの依存症と同じで、性的な刺激や興奮への欲求が徐々に習慣化し、健康や社会的地位など、他を犠牲にしてでも行動に走ってしまう。その結果、特定パートナーまたは不特定多数との過度のセックス、自慰行為、ポルノ画像の製作や収集、のぞき、痴漢、ストーカー、セクハラ、性風俗店通いなどに耽溺(たんでき)し、さらに症状が進行すると、性的虐待や強姦、自傷行為といった、暴力的な嗜癖へと発展することもある。世界保健機関(WHO)が作成した、疾病および関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)では、性嗜好の障害に分類され、フェティシズム、露出症、小児性愛、サドマゾヒズムなどと同格に見なされる。発症の背景には、ストレスやトラウマといった心理的素因が考えられ、患者自身も、罪悪感や自己嫌悪を感じているケースが多い。しかし、社会における認知度は低く、周囲から誤解されやすい。治療は依存症を専門とする医療機関で、カウンセリングなどを受診する。また、回復をめざす患者同士が協力して問題解決にあたる、自助グループも都市部を中心に活動を行っている。