胎児の発育過程で、性分化と呼ばれる雌雄決定プロセスが正常に行われず、染色体による性に対して、社会的に性を区別する性腺、性器などの性徴が生まれつきあいまいだったり、統一されていない状態のこと。厚生労働省では、発症頻度を約4500人に1人と推定している。正確な患者数は不明。以前はインターセックス、半陰陽(雌雄同体)などの用語が使われていたが、2006年に国際的な専門家会議がDSDを正式な医学用語として提唱し、染色体、性腺、または解剖学的性が非定型である先天的状態、と定義した。そのため、身体性と性自認が一致しない性同一性障害(GID)は、定義が合致せず、性分化疾患には含まれない。現在では原因解明も進み、性分化の過程で最初に発生する胎児精巣から出る男性ホルモンが関係していることがわかっている。ただし診断については、十分な知識をもつ医師や医療機関が限られるため、性徴による判断ミスや不適切医療の報告もある。そこで日本小児内分泌学会では、患者やその家族に対するケアも盛り込んだ、診療ガイドラインの策定に着手した。また近年は、男女という性区分の絶対性を見直す動きもあり、10年1月には国際オリンピック委員会(IOC)と国際陸連(IAAF)が、性分化疾患をテーマに専門家会議を開催している。