体内に侵入した病原菌やウイルスを、狙い撃ちして無害化できる人工の高機能分子。1998年、大分大学工学部の宇田泰三教授が、モノクローナル抗体(特定の抗原1種類のみに反応する純粋な抗体)の免疫学的性質を追跡する過程で発見した。最大の特徴は、ウイルスなどがもつたんぱく質を抗原として捕捉し、結合する「抗体」の性質と、たんぱく質を分解する「酵素」の作用を兼ね備えていること。本来、抗体は結合した抗原を破壊できず、白血球やマクロファージなどに頼って体内から除去するが、抗体酵素は抗原を自らの力で破壊できる。大分大学では、2007年からグループによる共同研究を始め、これまでにインフルエンザウイルス、エイズウイルス(HIV)、ヘリコバクター・ピロリ菌、花粉症アレルゲンなどに効果がある抗体酵素をマウスから作製してきた。しかし、人体への投与でアレルギーの副作用が指摘されたため、ヒト型スーパー抗体酵素(Human Antigenase)の開発に着手。狂犬病予防ワクチンを接種した人の白血球から遺伝子を抽出精製し、12年2月、ヒト型のアミノ酸配列をもった狂犬病ウイルス用スーパー抗体酵素の作製に成功した。