デングウイルスを保有するネッタイシマカやヒトスジシマカによって媒介される感染症。デングウイルス感染症は、主にデング熱とデング出血熱に大別される。いずれも感染すると、風邪に似た症状が現れ、3~7日後に発熱、頭痛、目の奥の痛み、筋肉痛、関節痛を伴い、食欲不振、腹痛を覚え、発症3~4日後に発疹が現れ、1週間ほどで後遺症を残さず回復する。このうち感染・発熱後、突然、出血傾向を伴う重篤な疾患となることもあり、これをデング出血熱といい、適切な処置を欠くと死に至る場合もある。媒介する蚊は、東南アジア、南アジア、中南米、カリブ海などの熱帯、亜熱帯地域に生息し、かつてはこの地域の風土病の一つであった。しかし近年、温暖化の影響を受けて蚊の生息地域が拡大し、中南米、アフリカ、オーストラリア北部、中国、台湾などでも、患者が確認され、ハワイでも2001~02年に120人以上の発症が確認された。さらに07年上半期だけでも、東南アジアで1万5000人以上の感染報告があり、1000人を超える死者を出した1998年、2001年を上回る大流行の恐れが指摘されている。日本国内では感染しないが、旅行先で感染し帰国後に発症したケースの報告例が増えている。効果的な治療法はなく、最良の予防は、媒介する蚊に刺されないことである。外務省は、アジア方面へ出かける旅行者に、肌を露出しない服装をするなどの、注意を呼びかけている。