人の血液を原料とする、フィブリノゲン製剤や第9因子複合体製剤を投与された患者らが、製造過程で混入したウイルスによって、C型肝炎に感染した薬害。これらの血液製剤は、血友病などの治療薬のほか、手術、出産時の止血剤として一般的に使用されたため、1980年以降で被投与者は約28万人(うち感染者約1万人)にのぼり、その多くが自身への投与を認識していないとされる。76年に製造、販売が開始され、87年に感染が発覚したが、厚生労働省は、2001年まで製剤がウイルスに汚染されていたことを正式に認めなかった。C型肝炎は、発症すると肝硬変、肝がんに進行する恐れがあるが、有効とされるインターフェロンの投薬治療は、高額であり、普及が進んでいない。02年、製薬会社と製造を承認した国に対して、被害者らが損害賠償を求めて、東京地方裁判所と大阪地裁に集団提訴。07年9月までに、5地裁のうち、全地裁が製薬会社の、4地裁が国の損害賠償責任を認定した(いずれも被告側は控訴)。07年10月には、製薬会社が、感染が発覚した1987年以降、発症者のリストを作成し、患者の一部を特定しながらも、告知をしていなかったことが判明。リストの提出を受けていた厚労省も、早期に治療を開始できた可能性がありながら、対策を講じていなかったことが発覚。「第2の薬害エイズ」と批判が強まった。07年11月には、大阪高等裁判所が、原告、被告に和解を勧告した。なお、薬害とされる肝炎にはほかに、注射器の使い回しを原因とするB型肝炎があり、06年6月に最高裁判所が国の責任を認定している。