振り込め詐欺をもくろむ犯人が、被害者をだますためにウソの情報を繰り広げる内容の通話。振り込め詐欺とは、オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺など、さまざまなシチュエーションの作り話で金銭を振り込ませる詐欺の総称で、手紙やメールのように文書を使ったものもあるが、ほとんどの場合、犯人は電話で被害者との接触を図る。犯人が、被害者の身内、あるいは警察官や弁護士を名乗り、身内の不祥事や事故、犯罪などに関連するウソの情報を与え、心理的に抑圧することで金銭の振り込みに誘い込むのが典型的な手口として知られている。警察庁によれば、その被害件数と被害額は、ピークであった2008年の3分の1ほどまで減ってはいるものの、11年では6255件、約111億3422万円にものぼるという。このように振り込め詐欺の被害が後を絶たないのは、人は好ましくない情報を数々与えられたとき、情報に対する考察能力が低下して、犯人からの情報を過度に信じ込むようになりながら、自らはそれに気が付かないという過信状態におちいってしまう点が大きい。そこで、名古屋大学と富士通は、被害者の声に現れる精神状態の変化を調べ、人が過信状態におちいったときの声は、高音領域において、声の大きさを示す波の振幅が小さくなる傾向がみられることに注目。そのパターンを検出して「過信状態らしさ」を判定する技術を開発し、12年3月19日に発表した。この成果は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)の一環によるもので、振り込め詐欺誘引通話の実際の録音データを用いた実験では、90%以上の精度で検出に成功した。さらに、「事故」「借金」「補償」「示談」のような特有のキーワードを検出する音声認識技術を組み合わせたシステムのプロトタイプを開発し、携帯電話などに搭載した実証実験も始めており、今後は実用性の確認と課題の洗い出しを行っていくという。