東日本大震災の大量のがれきを活用して土塁を築き、そこに常緑広葉樹を植えて防波堤・防潮堤とする全国初のプロジェクト。震災で壊滅状態となった海岸防災林の再生が目的だが、がれきを防波堤・防潮堤の一部に再利用することで、遅れがちながれき処理を後押ししようとする狙いもある。2012年4月23日、野田佳彦首相はがれき処理促進と津波対策の両面から海岸防災林の整備方針を表明。「森の防波堤」構想は、青森県から福島県までの300キロに、有害物質を取り除いたがれきと土で、幅100メートル、高さ約22メートルの土塁を築き、まっすぐ深く根を張るタブノキやシラカシなどの常緑広葉樹9000万本を植樹し、防波堤・防潮堤の役割を担わせるというもの。森の防波堤は、波砕効果で津波の威力を減殺、かつ引き潮で漂流する家屋や人が沖に流されるのを防ぐという。提唱者は、国内外で4000万本以上の植樹を指導してきた横浜国立大学の宮脇昭名誉教授。自治体や企業に呼びかけて計画が進んでいる。宮脇教授によれば、がれきの90%以上は建物の柱や壁、家具、コンクリートなどの“地球資源”であり、木片は10年で土に返り樹木の栄養分となり、コンクリートは根を巻き付かせ倒れにくい木にするため有用であるとのこと。また細川護煕元首相が、森の防波堤構想を推進する目的で、12年6月に一般財団法人「瓦礫を活かす森の長城プロジェクト」を設立、宮城県岩沼市や福島県南相馬市で植樹を進めようと計画している。さらに東日本大震災被災地のみならず、南海トラフの巨大地震津波を警戒する中部地方の企業や静岡県掛川市などにも森の防波堤構想計画が広がっている。