一般に、ドアの鍵にはシリンダー錠が使われている。鍵穴にキーをさしこむと、キーに刻まれた凹凸に沿って、タンブラーというロック機構が、しかるべき位置に移動し、キーと一緒に内筒を回せるようになる。かつて、多く使われていたディスクシリンダー錠は、内部に金属板のタンブラーが並んだ構造をしており、特殊な金属棒を鍵穴にさしこみ、一つずつずらしていくことで、キーを使わずとも開錠させることができた。そのため、1999~2000年ころをピークに、このピッキングを悪用した侵入犯罪が横行し、これに強いピンシリンダー錠が広く浸透するようになった。小さなピンをタンブラーに使うことで、内筒を固定するロックの数を増やしつつ、さらに一つのピンを上下で二分割し、その分割点が揃った位置でしか内筒を回せない厳密な構造をもつため、小さな鍵穴を通してのピッキングを困難にする。だが、昨今、ある改造を施したキーを鍵穴にさしこみ、これに衝撃を与えることで、実質的に内筒を固定しているピンの上側だけを、すべて同時に弾き上げ、タイミングを合わせて内筒を回すことによって開錠してしまう方法が、明るみに出た。この手段を「衝撃(bump)」にちなんでバンピングといい、その改造キーをバンプキーという。専門技術を必要とせず、短時間かつ痕跡を残さずに作業できることから、新たな犯罪につながることが懸念される。