病気や老衰で終末期を迎えた患者が、延命治療に頼らず、なるべく自然な姿で死に至ること。また、それを支援するような終末期医療の考え方のこと。特別養護老人ホームの嘱託医である石飛幸三医師が、著書「『平穏死』のすすめ」(2010年、講談社)の中で最初に提唱し、自然死や尊厳死の同義語として注目されはじめた。具体的には、回復の見込みがないがんや認知症、老衰などで終末期と診断された際に、患者本人の意思に従って生命維持装置による延命治療を差し控え、痛みの除去などの緩和ケアだけで安らかな自然死をとげさせる。日本尊厳死協会副理事長の長尾和宏医師によれば、脳卒中や交通事故などで、意識が戻らない患者の終末期も含めたものが尊厳死、人為的に死期を早める医療的処置をともなう場合は安楽死、と位置づけている。平穏死の考え方では、患者は死の直前まで食事を含めてやりたいことをやり、過ごしたい場所で過ごし、満足して旅立つことが基本となる。しかし、延命治療を優先的措置とする病院などでは実現しにくく、そのため在宅での看取りが推奨されている。