放射性セシウムを体内から除去し、内部被曝を軽減させる飲み薬の商品名。日本では2010年10月に承認され、日本メジフィジックス株式会社(本社・東京都江東区)が、カプセル状の処方箋医薬品として同年12月に製造販売を開始した。一般名は、ヘキサシアノ鉄(II)酸鉄(III)水和物(iron(III)hexacyanoferrate(II)hydrate)という。人間の体内に入った放射性セシウムは、腸で吸収され、肝臓に運ばれたのち、胆汁に溶けて再び腸に戻される腸肝循環により滞留、蓄積してしまう。そこで本剤は、放射性セシウムを薬の成分に吸着させ、便や尿への排出を促すしくみをもつ。このような作用の薬を、キレート剤(chelating agent)という。ドイツの製薬会社ハイル社(Heyl Chemisch Pharmazeutische Fabrik GmbH)が35年以上前に開発し、標準的な放射性セシウム体内除去剤として、ヨーロッパやアメリカで承認、販売されてきた。緊急被曝時に安全に使用できるため、世界保健機関(WHO)が推奨するエッセンシャルドラッグ(必須医薬品)にもなっている。用法は1日3回の経口投与。重篤な副作用や初期症状は特にないが、血中のカリウム濃度が下がって体調を崩す低カリウム血症、便秘、胃部不快感などをともなうことがある。妊婦や幼児に対する安全性、低線量被曝に対する効果についても、現時点では確立されていない。