西アフリカ原産のアカテツ科の植物、ミラクルフルーツ(Richardella dulcificum)の熟した果肉に含まれる糖たんぱく質の名称。ミラクリンには、ミラクルフルーツの果肉を食べた後、つまり舌にミラクリンがなじんだ後に、レモンなどの酸味の強いものを食べると、甘く感じるという特質がある。この効果は、1時間以上持続する。こうした味覚が変わる機能を持つ物質を、味覚修飾物質という。ミラクリンのしくみは今まで解明されていない部分も多く、ミラクリンが舌の甘味受容体に結合すると、酸味を与えられたときに甘みだけを感じさせるのではないかと推定されていた。2011年9月、東京大学大学院農学生命科学研究科の三坂巧准教授らが、このしくみを分子レベルで解明した。三坂准教授らは、ヒト甘味受容体を実験用の培養細胞上で作成し、甘味強度を測定するという実験を行った。この結果、ミラクリンを投与されたヒト甘味受容体に酸味溶液を加えるとミラクリンが活性化し、甘味を強く感じるようになった。また、中性溶液を加えた状態で別の甘味物質を投与したところ、甘味物質の活性を阻害したことも判明した。この結果は今後、糖分の摂取を制限されている人や、カロリー制限が必要な人向けの甘味料としての活用が期待される。なお、ミラクリンの研究については、横浜国立大学の栗原良枝教授らのグループが先駆で、1988年にミラクルフルーツからの精製に成功。以降、化学構造や糖鎖構造などが解析されてきた。