感染症のポリオを予防するワクチンの一種。ポリオは、ポリオウイルスの感染によって手足にまひが起こり、その後も生涯にわたって運動障害が残ることが多い病気。治療法がないため、ワクチン接種によって防ぐしか対処法がない。日本ではかつて乳幼児を中心に多発したが、1961年からワクチン接種が始まり、自然感染例は80年を最後になくなった。その後も、乳幼児へのワクチン接種が続いている。ところがその後、ごくまれではあるが、ワクチン接種によってポリオに感染する例が報告されるようになった。日本では現在、毒性を弱めた生きた病原体を使う「生ワクチン」が使われているが、これによって感染し発症することがあり、国の予防接種健康被害認定審査会によれば、1989~2007年度の19年間で、80人が生ワクチンの接種の後にまひを発症したとされる。このため、生ワクチンではなく、死滅させた病原体などを材料とする安全な不活化ワクチンの使用を求める声が高まり、未承認の不活化ワクチンを独自に輸入して使用する医療機関も増えている。10年12月15日、患者団体「ポリオの会」が、厚生労働省に約3万5000人の署名を提出。国産の不活化ワクチンが承認されるまでの間、海外のワクチンの特例承認と緊急輸入で対応するよう、申し入れた。ほとんどの先進国で、すでに不活化ワクチンが使用されている。