1996年に大阪府堺市など各地で集団感染があったO-157と同じく、出血を伴う腸炎や合併症を引き起こす腸管出血性大腸菌の一種で、通常の食中毒菌と異なり非常に少ない菌数でも発症する。感染すると数日間の潜伏期間の後、激しい腹痛や下痢、血便を起こす恐れがあり、さらに血小板の減少、貧血、腎機能障害を特徴とする溶血性尿毒症症候群(HUS)や、脳神経が機能しなくなる脳症に至る危険もある。人間など動物の腸内には約180種の大腸菌が常在し、食物繊維の消化を助けるなどの働きをしているが、牛の腸などにいる大腸菌の一部は人間に下痢などを引き起こす。これを病原性大腸菌と呼び、そのうち出血を起こすものを腸管出血性大腸菌という。大腸菌は表面のO抗原の構造の違いによって、発見順にO-1から番号で分類されており、腸管出血性大腸菌にはO-111、O-157のほかにO-26、O-128などがある。これらの菌が重い中毒症状を引き起こすのは、病原性の強いベロ毒素(シガ毒素ともいう)を産生するため。2011年4~5月に富山、福井、神奈川の3県で死亡者4人を含む約170人の患者が発生した焼き肉チェーン店の集団食中毒は、生肉料理のユッケなどに含まれていたO-111とO-157が原因とみられている。腸管出血性大腸菌の感染経路は食肉加工食品が多いが、75度で1分間加熱すれば死滅する。空気感染はせず、人から人への感染は手洗いで予防できる。