2011年3月11日の東日本大震災発生時、岩手県釜石市の小中学生が自らの判断で避難行動を行い、ほぼ全員が津波被害から逃れたという事例。のちにマスメディアが、釜石の奇跡と名づけて報道した。釜石市では、04年から群馬大学災害社会工学研究室の片田敏孝教授を、防災・危機管理アドバイザーに任命して指導を要請。市内14の全小中学校で、防災教育を行ってきた。片田教授は、東北地方の太平洋沿岸に伝わる「津波てんでんこ」の教えを採り入れ、(1)想定にとらわれない、(2)最善を尽くす、(3)率先避難者になる、を「避難3原則」として提唱し、授業や訓練を徹底させた。その結果、地震発生直後には津波被害の想定外地域にあった中学校でも生徒が自主避難を開始し、その後を追って小学校に残っていた児童が避難、さらに指定された避難場所の危険性を察知して、より高い場所に避難誘導するなどの行動も見られた。震災による釜石市の死者・不明者は全体で1000人を超えたが、約3000人の小中学生については、生存率99.8%(死者5人)となった。こうした事例を途上国などの災害対策に役立てるべく、世界銀行と日本政府による共同プロジェクト「大規模災害から学ぶ」は、経緯をまとめた教訓集を作成。12年10月に宮城県仙台市で開催された世銀総会関連イベントにおいて、カマイシ・ミラクルとして発表した。