薬物の大量服用や、誤飲によって、意識や内臓機能に一時的な障害が起こり、時には死亡に至る病態。向精神薬や消炎鎮痛剤などの医薬品のほか、パラコート剤や有機リン剤に代表される強毒性の農薬、殺鼠剤(さっそざい)として用いられる有機フッソ剤、たばこに含まれるニコチン、家庭用洗剤なども原因となる。軽症の場合は嘔吐(おうと)、腹痛、下痢程度ですむが、重篤になると(1)意識が混濁する、(2)神経系が異常に興奮する、(3)手足や舌などがしびれる、(4)呼吸困難や動悸が生じる、といった症状が起こり、医師の治療を要する。経口後まもない場合は、催吐(さいと)、温水や生理食塩水での胃洗浄、下剤・吸着剤投与を行い、毒素の吸収を阻害する。すでに吸収されてしまっている場合は、強制利尿による毒素の排除、血液の濾過・透析・交換治療を行う。ただし患者の状態や症状で治療が厳しく制限されるうえ、特定の薬物を除いて有用性は少ない。財団法人日本中毒情報センターでは、24時間体制で急性中毒に関する相談を有料で受ける中毒110番を開設している。